「伯林の落葉」岡本かの子 45歳の作品  *伯林=ベルリン   1934年(昭9)「婦人文芸」11月号初出

朗読時間:9.09分   読み手:ND

男は日本の恋人から裏切りの手紙を受け取った。日本を出発する時、彼女からもらった朴歯の下駄をはいて彼はベルリンの街路を歩きに歩いた。彼の古マントの袖は破れ、下駄の緒は切れ、木の根で痛めた指からは、なまなましく血が滲んで居た。そして森の落葉を唇に喰らいそれをまた体中にまぶし付けた日本男、狂人として彼は伯林市の市街巡査等の庇護の手にとらえられた。